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【ロボットの目】事件解決の一方で冤罪・規制も。顔認証カメラの問題点とは?

2020.05.27  | 
WRITER:
haruka
 

防犯カメラなど警備に顔認証が導入されたことで、犯人逮捕に繋がるといった成果を得られています。

 

街中や店舗で顔認証システムを活用したカメラが使われることには、「自分は悪いことをしていないから大丈夫・犯罪防止に繋がる」とポジティブな意見があります。しかし、「監視されているようで怖い・気持ち悪い」といったネガティブな意見があるのも事実です。

 

今回は、日本や世界で防犯のために導入された顔認証システムがどのような成果を出しているのか、また誤認/冤罪といった問題点に注目しました。

日本:顔認証を使った捜査で事件解決へ

警視庁には「捜査支援分析センター(SSBC)」という部隊があります。SSBCの役割は、主に防犯カメラの画像解析や電子機器の解析を行う「分析捜査支援」、主に犯罪の手口などから犯人像を分析するプロファイリングを行う「情報捜査支援」の2つに分けられます。

 

また、ここから第1捜査支援・第2捜査支援・機動分析の3つの部門に分けられます。顔認証システムを取り入れているのは、第2捜査支援が担う3つの係のひとつ「情報支援」です。

 

「情報支援係」の担当は、捜査情報の収集および管理に関すること、情報管理システムによる土地鑑資料の登録および照合に関すること、旅券・在留カード・特別永住者証明書等の簡易鑑定に関することである。事件発生時に参考になりそうなさまざまなデータ、「被疑者カード」を捜査本部などに提供することで、手口などの情報面で捜査をサポートする。また、SSBCの真骨頂でもある防犯カメラなどの画像処理及び顔画像照合に関することも行っている。防犯カメラ等で撮影された人物と被疑者が同一人物かどうかを判断する場合に、両者を照合するシステムを利用して、識別を行っているのもこの係だ

(中略)

「機動分析第1・第2係」は現場における捜査支援に努め、時間が経つと消去される可能性のある防犯カメラの画像の収集にあたり、それを分析しつなぎ合わせて犯人の逃走経路をあぶりだす。

 

(出典:Wikipedia|捜査支援分析センター

記憶に新しい事件では、2018年10月に渋谷センター街で軽トラックが横転させられた事件も、SSBCが捜査に加わっています。この事件は街中の防犯カメラ画像はもちろん、ネット上に拡散された動画も犯人特定に繋がり、わずか2週間程度で計15人を特定できました。

 

(出典:渋谷ハロウィン・軽トラ横転犯を捕まえた防犯カメラ捜査の凄さと怖さ

ニュースで大々的に取り上げられたので覚えている方も多いと思いますが、あの混乱の中から犯人を特定できたのは、人を見分けられる顔認証があったからこそと言えますね。

日本:顔認証×防犯カメラで犯人捕捉

全国初の取り組みとして注目を集めた「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」。これは、渋谷の書店3店舗が協力し、顔認証システムと防犯カメラで万引きなどの犯罪を防ぐ目的で行われました。

参加店における万引き等に当たる犯罪防止と参加店において万引き等の犯罪を行ったことが確実な者の来店を確認、警戒するため。

 

(出典:渋谷書店万引対策共同プロジェクト|「渋谷プロジェクト」について

この「万引き等に当たる犯罪」には、万引き、盗撮、器物損壊、暴行・傷害、公然わいせつも含まれます。プロジェクトを開始した2019年7月末~10月末の状況について、事務局は次のように発表しました。

 

登録件数は17件16名。すべて万引行為。内1件は同一人物が登録した当該店以外に出没。発報後警戒したが、最終的に逃亡。当プロジェクトが機能した初めてのケース。

捕捉人数3名。

 

対象者が確認でき、捕捉に繋がるという成果が得られました。

ここで気になるのは、顔など個人情報がどのように扱われるのか。

 

同プロジェクトでは、「参加店舗が保有する万引き等の犯罪事犯に関する被害及びそれら事犯を敢行した対象者に関する情報(実行日時、被害状況、対象者の特徴、関連する防犯カメラ画像、及び顔識別データ)」を共同利用しますが、対象者の氏名は事務局のみが保有し、店舗には提供されません

データを共同利用する者の範囲は参加店舗と事務局で、他者には提供されません。加えて、こうした情報は開示請求ができます。

 

(出典:渋谷書店万引対策共同プロジェクト|「渋谷プロジェクト」について渋谷書店万引対策共同プロジェクトの開始後3か月の状況について

 

顔認証が防犯に役立つと分かっていても、プライバシーの侵害になるようなデータの扱い方がされていないかは誰でも心配になります。個人情報の取扱いを明らかにしたり情報の開示を求めることができるのは、透明性を守るために重要なことの一つと言えますね。

クレストホールディングス株式会社が男女500人を対象に行った調査では、カメラを使った顔認証技術のサービス利用に対して約6割の人が抵抗があると答えています。

 

その理由は、

「目的は何であれ、無断で自分の顔や姿を撮影されることが不快だから(47.5%)」

「自分の写った画像や動画がどの様に利用されるかわからないから(45.7%)」

などが挙がりました。

撮影自体に不快感を覚えたり、利用用途が不明瞭であることが抵抗感に繋がっています。データがどのように扱われるのか、誰がそのデータを見ることができるかなど、明確に提示しなければいけませんね。

 

抵抗がないと回答した人の理由では「顔認証のほうが暗証番号の流出などの悪用リスクが少なくセキュリティ面で安心できるから(46.6%)」が最も多く、顔認証を活用した防犯に期待していることがうかがえます。「自分の顔や姿を撮影されることに抵抗がない(36.6%)」という回答もありました。

 

(出典:2019顔認証元年を経て、顔認証技術「認知しているが利用経験なし」が約4割顔認証サービス4割が利用意向あり、店舗での実用化に期待 <「カメラによる顔認証技術に対する意識調査」を実施>

 

続いて、海外では顔認証システムがどのように役立っているかを見ていきます!

海外:導入の動き、犯人逮捕の成果も

600万台もの監視カメラが設置されているイギリス。ロンドン警視庁は2020年1月24日、「ライブ顔認証テクノロジー(LFR:Live Facial Recognition technology)」の導入を発表しました。

(出典:Channel 4 News

LFRは銃や刃物を使った襲撃、指名手配犯の捜査、行方不明者の捜索、児童の性的搾取などの犯罪に対して活用されます。重犯罪が起こる可能性の高い特定のエリアに設置し、カメラは監視中であることが分かるよう印がつけられているといいます。

テロや犯罪の抑止、市民の安全確保に貢献してほしいですね。

 

(出典:英ロンドン警察、顔認証システムを導入ロンドン警察、「リアルタイム顔認証」で監視活動を開始へ通行人の顔をリアルタイムで監視する日本製「ライブ顔認証システム」の導入をロンドン警察が開始

 

ありとあらゆるものに顔認証が導入されている中国では、顔認証システムを搭載した監視カメラ「天網」が有名です。監視カメラのほか、顔認証システムとカメラを搭載したサングラス型のスマートグラスも捜査に活用しています。

(出典:Total Tech News

スマートグラスで人物を撮影すると、警察本部のデータベースと照合し登録されている人物かどうか特定することができます。天井などに固定された監視カメラよりも、動きながら監視できるスマートグラスの方が事件や事故の発生に早く対応できそうですね。

 

帰省客で混雑する春節の時期に鄭州市の警察が駅でスマートグラスを使用したところ、犯罪容疑者7人、偽の身分証を持っていた26人の逮捕に繋がりました。

 

(出典:顔認証技術で容疑者発見、中国の警察がスマートグラスを導入中国の警察は顔認識機能を搭載したサングラス型デバイスを導入して監視体制を強化している

 

このように、市民の安全に顔認証システムが貢献する一方で、軽視できない問題も浮き彫りになっています。

誤認の発生、顔認証の規制が始まる

顔認証システムの問題点としてどの国でも挙がるのは、プライバシーの侵害と誤認/冤罪についてです。

 

ロンドン警視庁が導入したLFRですが、エセックス大学のピート・フュッシー教授とダラー・マレー博士による2019年7月の調査報告書によると、調査対象となった事案で検出された容疑者42人のうち本当に犯人だったのは8人でした。監視対象の人物リストに掲載される基準も不明瞭で、中にはすでに裁判が終わっている人物も掲載されていたといいます。これでは冤罪になりかねません。

 

(出典:ライブ顔認証システムが見つけた「容疑者」のうち81%は無実

顔認証システムを利用した監視に対して規制の動きも出ています。アメリカではこれまで、ニューヨーク市警察やFBIなどが警備・捜査に顔認証を取り入れていますが、各地で顔認証技術を使うことを禁止する条例が可決されています。

 

例えばサンフランシスコ市では2019年5月、顔認証を使った監視を禁止する条例案が可決されました。これはアメリカの市として初めてのことです。この条例は警察など市の機関が対象で、顔認証を使った監視技術に加え、顔認証以外の監視技術についても市議会の許可が必要になりました。なお、一般市民や民間企業、連邦規制が適用される空港や港湾はこの対象ではありません。

 

規制の背景には女性や有色人種に対し認識率が低いということがあり、誤認や人種的偏見に繋がることが懸念されています。同様の規制はサマービル市やオークランド市でも始まっています。

 

(出典:サンフランシスコ、市当局による顔認証監視技術の利用禁止へサンフランシスコが市当局による顔認証技術の使用を禁止する条例案を可決

 

こうした懸念についてはマイクロソフトも言及しており、同社は2018年7月、顔認証について政府による規制と業界における方策が必要であるという見解を公表しました。また政府に対し、顔認証について2019年内に規制を設けるよう対応を促しています。

当社は、2019 年中に、政府がこのテクノロジを規制するための法律を制定することが重要であると考えています。まさに、壺の中から顔認識の魔神が出現しようとしています。何も行動を取らなければ、5 年後には、顔認識サービスが社会的問題を悪化させるような状況に直面する可能性もあります。一度そうなってしまえば、課題を解決することははるかに困難となるでしょう。

 

特に、社会的責任と市場での成功のいずれかを選択しなければならないテクノロジ企業が、徹底的な市場競争において世界のために最善を尽くすことは考えにくいでしょう。このような状況を避ける唯一の方法は、健全な市場を保つための、責任の基準を作ることです。また、明確な基準を作るためには、このテクノロジとそれを開発し、活用する企業が、法の支配によって管理されることが必要です。

 

(出典:Microsoft|顔認識テクノロジに関する当社の見解について:今が行動の時

同社は「私たちは顔認識テクノロジが乱用されるリスクと可能性にも注意を払う必要があります」と述べ、政府が対応すべき3つの課題を挙げました。

 

第一に、とりわけ開発が初期段階にある現状を考えれば、顔認識テクノロジの特定の利用法が偏見を含み、さらには、法に違反するような差別を含む意思決定(より一般的に言ええば、結果)を生み出すリスクを増す可能性があります。

第二に、このテクノロジの広範な利用が人々のプライバシーを侵害する可能性があります。

そして、第三に、政府による大規模監視のための顔認識テクノロジの利用が、民主主義の自由を損なう可能性があります。

 

同社は法整備によりこうした問題を解決すべきだと考えています。

 

(出典:Microsoft|顔認識テクノロジに関する当社の見解について:今が行動の時

日本でも規制を求める動きがあり、2016年9月に日本弁護士連合会が「顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」を取りまとめ、警察庁長官や個人情報保護委員会委員長などに提出しています。意見書では、監視カメラと顔認証システムは犯罪捜査に貢献するものの、次のような側面もあると指摘しています。

監視カメラは,犯罪の発生の有無にかかわらず,無限定に無数の人々の行動を記録するがゆえに,その管理運用や利用の仕方いかんによっては,無数の人々の肖像権やプライバシー権を侵害する危険性がある。その上,顔認証システムは,膨大な監視カメラ画像から特定の個人を識別することを可能にする検索機能を有しており,これは,人々の行動さえ監視可能とするものであり,更なるプライバシー侵害性を孕んでいる。

 

(出典:日本弁護士連合会|顔認証システムに対する法的規制に関する意見書

これに対し、「利用条件の限定」「個人情報保護委員会による監督」「基本情報の公表」「被疑者・被告人等の権利」を盛り込んだ法律の制定と、関連法令の改正を行い適切な規制を行うこと、そして被疑者・被告人等からのアクセス権の保証を認めるべきとしています。

 

(出典:日本弁護士連合会|顔認証システムに対する法的規制に関する意見書

 

顔認証システムは今や、私たちの生活に密接したテクノロジーのひとつです。顔認証は防犯や事件の捜査に貢献していますが、乱用され人々の人権が侵害される事態を起こさないためにも、法整備は必須と言えるでしょう。政府そして企業も、顔認証システムの正しい活用と、それに関する情報の取扱いの周知に取り組んでいかなくてはいけませんね。

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