もう新人教育に振り回されない? しかし、人手不足解消の代償は働きがい消失?
2017.12.13 |- WRITER:
- irbis
飲食業や介護など、常に人手不足と言われる業界では、新人が入って来て一人前になるまで教育するのが非常に大変です。しかし、せっかく手間暇掛けて教育しても、仕事がキツイなどの理由ですぐに辞めてしまう率も高いですよね。
辞めたら新しい人を入れる必要が生じます。そうすると、また新人をゼロから教えなければなりません。新人教育だけに携わる係の人がいれば問題ないのですが、常に人手不足の職場の場合、先輩やベテランが自分の仕事をしながら教えることが多いのではないでしょうか。
「ようやく仕事を任せられるかな?」とホッとした矢先にその人がいなくなり、また新しい人が入ってくるのでは、際限なく繰り返される新人教育に先輩もベテランも疲れ切ってしまいます。なんだかギリシア神話のシーシュポスのような気分になってしまいますよね。シーシュポスは山頂まで巨岩を押し上げるよう命じられましたが、岩はもう少しで頂上という所で毎回転げ落ち、また麓からやり直しになってしまうのです。
新人がAIなら教育は1回だけ あとはコピーすれば良い
もし、こうした現場にAI搭載のロボットが入って来るなら、最初のロボットさえ教育すれば、その経験はいくらでもコピーできます。ベテランも新人教育スパイラルから抜け出せ、職場環境の改善に大いに貢献できるでしょう。
AIが直に現場に入ってきて学ぶ他に、こういう場合はこういう対応をするものだと人間が入力していけば、経験はデータとして蓄積されていきます。しかも、入力は一回すれば終わりです。新しいロボットが入って来てもコピーするだけ。マニュアルを人間に覚えさせるより、AIにコピーする方がはるかに多くはるかに早くできますよね。
しかも、複数のAIがネットワークで繋がりながら働き出すことでその経験は増え続け、大量の経験が蓄積されていくのです。一人の人間が一生のうちにする経験だけでは太刀打ちできなくなります。飲食業や介護の仕事はマニュアル化できないからロボットにはできないと言う人もいますが、臨機応変な対応とは経験の多さによって裏打ちされているものではないでしょうか。そして、たくさんの選択肢から最適解を選び出すのは、AIの方が人間より早いし正確です。豊富な経験から選択肢が多くなり、AIにも臨機応変な対応が可能になりそうです。
介護の仕事はロボットの方が向いている?
先日のSoftBank Robot World 2017で、ペッパー君を介護の現場に導入した事例についてのセミナーを聴講しました。そこで想像以上にペッパー君が活躍していることを知りました。ペッパー君に力仕事はできませんが、話し相手になってくれると孫のように可愛がられているそうです。
たとえば、端で聞いていると認知症の方とペッパー君との会話は、往々にして成り立っていないそうです。それでも、人間のスタッフよりペッパー君を好いている人もいるとか。ペッパー君はいやな顔をせずに何時間でも話を聞いてくれますし、スタッフのように「あれしちゃダメ、これしちゃダメ」「ああしなさい、こうしなさい」と小言を言わないからでしょう、とのことでした。ペッパー君、なかなかの人付き合い上手です。

なんでも、おばちゃんに話してみい!(イメージです。TEAM PARADIGMの駄菓子屋ぺっちゃん SoftBank Robot World 2017にて)
人間だと、同じ愚痴や悪口を何回も聞かされるとうんざりしてしまうこともあります。それがうっかり態度に出てしまうのであれば、ロボットの方が「心のこもった人間的対応」ができるのかもしれません。
臨機応変で人間的な対応のできるAIが、器用で力強い腕のあるロボットの身体を持ったら、「私はこの仕事をやるために生まれてきた!」と思えるほどの適性がある人でさえ、ロボットにかなわなくなりそうです。しかもそれは、間近に迫ってきていると感じられました。何をやるにもロボットの方がうまくできるようになった時、人間の働きがい、存在意義はどの辺に求めれば良いのでしょうか?
既にあなたの存在意義は薄れているかも?
「そんなのは、100年以上先のことだよ」と笑い飛ばしたあなた!
今のAIの発達速度からすれば、そんなに先のことではありません。

君はだれだい? ここのうちの子はボクだよ
たとえばあなたの親御さん。滅多に訪ねて来てくれないし、電話もくれないあなたより、毎日話し相手になってくれるペッパー君やaiboちゃんの方がかわいくて、あなたの存在意義が限りなくゼロに近くなっているかもしれませんよ!