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北京大学がコバンザメの体を模倣した水中用吸着システムを開発

2017.10.24  | 
WRITER:
水谷圭佑
 

北京大学において、コバンザメの体を模倣した「水陸両用吸着システム」が開発されました。このシステムは通常の吸盤と違ってざらざらした面にも吸着でき、後ろに引っ張るとさらに強くひっつく特徴があります。剥がすのは自由に行え、貼り付いた者に傷が生じない所も利点です。
カエルやヤモリ、タコなどの生き物を模倣した吸着システムはこれまでも研究・開発されてきましたが、コバンザメを模倣したシステムはこれが初となります。

コバンザメはどんな魚?

コバンザメはマグロやカジキ、サメ、ウミガメ、クジラなど、他の大きな動物の体に貼り付いて生活していることで有名な魚です。サメの名前がついていますが、アジやマグロと同じスズキ目の魚で、サメの仲間ではありません。
大きな生き物と行動を共にすることで外敵から身を守りつつ、宿主の食べこぼしや寄生虫、糞を糧にして生活しています。

コバンザメの吸着器官

コバンザメの頭には名前の由来になった大きな吸盤があり、これで宿主の体に貼り付いています。この吸盤は背びれが変化した器官で、縁にある分厚い結合組織が宿主の体の表面にフィットすることで、強烈な吸着力を発揮します。
また、吸盤の内側には「ラメラ」というヒダのような構造があります。このラメラは、普段は後ろに倒れていますが、吸盤で標的の体に引っ付くと起き上がり、いくつもの「小刺」と呼ばれる微小な歯のような組織が出てきます。硬い毛を逆なでした時のように、小刺が表面に引っかかり、吸着力をさらに向上させるという仕組みです。

引っ張れば引っ張るほど強く吸い付く吸盤

コバンザメが貼り付く相手は、かなりの速度で泳ぎ続ける種類が多くいます。例えばマグロは時速3~7キロメートルで全く休みなく泳ぎ続けますし、クジラは最大で時速50キロメートルを出すこともあります。体長70センチメートルのコバンザメがこれらの生き物に貼り付いて生きるのは、人間なら走る車の屋根にしがみつきながら生活しているのと同じようなものです。
しかし、ラメラと小刺を使った吸着の仕組みなら、後ろに引っ張られると吸着力が向上するので、宿主になる生き物が泳ぎ続けている限りは、コバンザメは全く力を入れずとも貼り付いていられます。宿主が速く泳げば泳ぐほど吸着力が高まるので、振り落とされる心配はほとんどありません。
離れたい場合は、コバンザメ自身が泳いで少し前進すれば、小刺が外れるとともに吸盤内に水が入り、容易に外れます。

コバンザメロボットの構造


今回開発されたロボットは、北京大学で生物模倣工学を専門としている。リー・ウェイ教授らのチームによって生み出されました。ウェイ教授はハーバード大学に在籍していたとき、3Dプリンターを利用してサメの体表構造を再現する研究に取り組んでおり、その際にサメの写真に写っていたコバンザメを見たことが、今回の研究につながったと話しています。
ロボットはコバンザメの吸盤部分だけを再現したもので、メインとなる部分は、柔軟性のある素材を3Dプリンターで形成することによって作られました。小刺はカーボンファイバーをレーザーで加工したスパイクです。
内部には6個の空気圧アクチュエーターが備えられ、これが筋肉の代わりにラメラを立たせるようになっています。

どんなものにも吸着可能


実験においては、プレキシガラスのようなつるつるした物体から、シリコンゴムのような柔らかい物、果ては本物のサメの皮膚に至るまで、あらゆる物体に対して良好な吸着性を示しました。滑らかなプレキシガラスに対してはロボット本体の340倍の重さ(436ニュートン。約45キログラム)に耐えられる力で吸い付き、普通の吸盤では吸い付きにくいざらざらのサメ肌に対しても、167ニュートン(約17キログラム)の力で吸い付いています。
この吸盤を全長約30センチメートルの小型ROV(遠隔操作無人潜水機)に取りつけて実験を行ったところ、どんな表面素材にも4秒以内に、ほぼ100パーセントの確率で吸着に成功する結果が得られました。

船も引っ張れる?

水中において、あらゆる素材に対して、傷を付けずに強い力で貼り付けるシステムというのは、実は今までありそうでなかった技術です。吸盤ではざらざらした表面には吸着しづらく、磁石ではFRP(ガラス繊維強化プラスチック)で作られている漁船やヨットの船体には貼り付きません。
ROVを使った試験のように、この吸盤は小型の潜水ロボットに装着して使うことが想定されています。ROVにケーブルやワイヤーをつないでおけば、海中の物を引き上げたり、船を曳航したりすることにも使えそうです。引っ張るほど吸い付く力が強くなるという点で、この使い方はうってつけといえるでしょう。

本物と同じ働きにも期待

この他、海洋生物の追跡調査にも利用できそうです。マグロやウミガメ、クジラ、サメなどの生態を調査する際には、通信用ビーコンを生き物の体に装着して行動を追跡する手法が良くとられます。しかし、外付け式は途中で外れることが多く、埋め込み型では生き物を傷つけてしまいます。
コバンザメの吸着システムなら、生き物がどれだけ速く動こうとも、全く動力を使用せずに張り付き続けることが可能で、しかも体に傷がつきません。コバンザメの吸盤はこうした生き物に貼り付くために進化してきたので、まさに最適な使い方です。
今後の水中用小型ロボットには、揃って頭に「小判」がつくようになるかもしれません。

 

ソース・画像:Live ScienceScienceengadgetTech Xplore

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