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AIが予測する「認知症」発症のリスク

2017.09.12  | 
WRITER:
工樂真澄
 

2025年には65歳以上の5人に1人が発症するともいわれる「認知症」。徘徊行動や介護の問題など、ニュースで取り上げられることも多くなりました。認知症はいくつかの種類がありますが、最も多く見られるのが「アルツハイマー型」認知症です。今は認知症治療の良いお薬があり、もし早いうちに発見できれば、症状が進むのを効果的に遅らせることができます。そのため、いかに早く見つけるかが重要な課題になっています。

人工知能を使って効果的に認知症の発症を予測する

最近、アルツハイマー型認知症の発症しやすさを「人工知能」によって予測する方法が開発されました。開発したのはカナダのマクギル大学のチームです。アルツハイマー型の患者さんの脳には、「アミロイドβ」とよばれるタンパク質が溜まっているのが特徴です。このタンパク質は健康な人の脳にもありますが、なにかの拍子で作られる量が壊れる量より多くなってしまうと、どんどん蓄積して塊になってしまいます。すると脳の神経細胞の働きを邪魔したり、壊してしまったりする原因になります。

 

アミロイドβタンパク質は、ある日突然増えるわけではありません。認知症を発症する10年も前から、徐々に溜まり始めると言われています。これを早期に発見するために威力を発揮するのが「ポジトロン断層撮影法(PET)」です。「ポジトロン」という物質が体内に入ると、そこから放射線が発せられ、これを画像化して病気の診断をします。これを認知症の診断のために応用したのが「アミロイドPET」です。この方法では、アミロイドβにだけ結合する物質をあらかじめ放射性同位体でラベルしておくことで、アミロイドβの検出をすることができます。

文献1)Fig.2より アミロイドPETの画像。アミロイドの凝集が多いほど赤っぽく見える。

ただし、アミロイドPETでは、そのときの脳の状態を知ることはできますが、それだけでは将来的に認知症になりやすいかどうかを見極めることはできませんそこで登場するのが「人工知能」です。ベースになるアルゴリズムは「ランダムフォレスト」という方法で、アミロイドPETの画像から、効果的に、また高速に、将来的に認知症を発症するリスクがどれくらいあるかを判断することができるそうです。

予測精度は84%! 早期発見で早期治療

実験に参加した273人の高齢者のうち、2年後に実際に認知症を発症した方は43名でした。結果的に、AIは84%の精度でこれらの方々の発症を言い当てることが出来ました。もし、発症リスクが高いことがわかれば、その時点で治療をスタートすることで、より効果的に進行が抑えられると期待できるわけです。

自分だけの問題じゃない。みんなで考えたい認知症

「認知症なんて年をとってから心配すればいいや」と考える若い方は多いでしょう。でも、認知症はいまや「生活習慣病」ともいわれ、食生活や運動習慣によって、発症のリスクを下げられるとも言われます。そのため、若い時から健康に気をつけておくのは大切なことです。認知症になるとつらいのはご本人だけではありません。サポートする周りの方のご苦労もはかりしれないものがあります。一人でも認知症で悩む方を減らすためには、今回ご紹介したように、まずは認知症のサインをいち早く見つけることがとても重要なことなのです。そのために人工知能が役立つとしたら、これほど素晴らしいことはないのではないでしょうか。

 

 

画像・ソース

  1. Identifying incipient dementia individuals using machine Mathotaarachchi S. et al. Neurobiol Aging. 2017 Jul 11. pii: S0197-4580(17)30229-4.
  2. 厚生労働省「認知症とは」

 

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