心やさしいロボットアニメの原点?! 東洋初のヒューマノイド學天則
2017.07.26 |- WRITER:
- Guinean
東洋初の人造人間(ロボット)學天則
日本で初めてロボットがつくられたのは1928年、なんと90年も前のこと。京都で開催された「昭和天皇御大礼記念博覧会」で東洋初のロボットとして紹介されました。
高さは約3.5メートルというこの巨大ロボットの名は、「學天則」。天の法則(自然)から学ぶという意味を持っています。
大きさ、デザイン共になんともインパクトのあるこのロボットは、人間らしい表情と美しい動きを機械で再現するため、当時すでにあったモーターをあえて使わず、圧縮空気を動力としてゴム製の顔に繊細な表情をつくりだしました。
世界中の民族の特徴を少しずつ加えてデザインされた顔立ちは、人種の差異を超えていくという精神性をあらわしているそうです。
血管を模したチューブから圧縮空気が排出されると、まるで呼吸しているかのようにゆっくりと目や頬が動き、なんともリアルな表情をつくりだします。
90年前に日本で考え出された、人間らしく優しいロボットというイメージの先駆けであり、現代のヒューマノイドの原点ともいえる作品です。
実存するロボットとして初めて映画にも登場した學天則
日本のアニメーションには、鉄腕アトムやドラえもん、天空の城ラピュタで鳥の世話をするロボット兵などのように、たくさんの心やさしいロボットが登場します。
人間と友だちのように振舞うロボットのイメージは、たくさんの人々の心をとらえ、現代ロボット工学を発展させる大きな原動力になったともいわれています。
學天則も、1988年の映画『帝都物語』に人間を守る人造人間として登場しました。作品の中では一部蒸気機関が使われるなどフィクションもまじっていますが、実存するロボットが劇中に登場したのは、これがはじめてのことでした。
大阪で見ることのできる実物大の學天則
オリジナルの學天則は現存していませんが、2008年にレプリカが大阪私立科学館で復元され、現在でも動く様子を見ることができます。
學天則がゆっくりと目を開け、ゆうゆうと動く様子は、90年前に初めてロボットを見た人々をさぞ驚かせたことでしょう。
學天則の表情は、どこか人形浄瑠璃を連想させます。発表当時は中に人が入って動かしているのでは、と疑った人もいるのではないでしょうか。
大阪市立科学館では、學天則の制御装置や顔の構造も透明ケースで個別に展示されており、自動で動くロボットであることがよくわかるようになっています。
レプリカの學天則はコンピューター制御で圧縮空気を送りだしているそうですが、開発当初はオルゴールのような大型ドラムを回転させて制御していました。
左手には「霊感灯」とよばれるアイデアが浮かぶと光るライト、右手には戦国時代に戦闘開始の合図としてつかわれた鏑矢(かぶらや)の形をしたペンを持ち、瞑想の後に霊感をさずかってアイデアを書きだす動作をします。
開発者の西村真琴博士によると、未来の課題を解決していく際のあるべき精神性を、學天則は表現しているそうです。
実務的というにはいささかゆっくりとした動きには、科学が暴走する危うさへの戒めが。また鏑矢のペンには、ロボット開発の黎明期において、自然から学ぶことでよりよい未来にしていこうとする意思が、こめられているのかもしれません。
ロボットは昔から人間らしさを追求していた
日本で最初につくられたロボットが、工場用の自動機械でも兵器でもなく、実用的でないヒューマノイドだったというのは意外でした。
アトムほど人間に近いロボットが生まれるのまだ先のことかもしれませんが、これからも柔軟な発想で學天則のようなおもしろいロボットが開発されることを楽しみにしたいですね。