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私の手は画面の中に:失った手足をVRで動かす技術の開発が進行中

2017.07.11  | 
WRITER:
水谷圭佑
 

もしも手足が失われても、イメージにだけで失った部分をVRで動かせるようになれば、現実でも同じように失った部分を補えるのではないか? そんなアイデアを実現へと一歩近づける技術が、IDC(イスラエル学術センター)ヘルズリヤにおいて開発されています。
この技術は、脳と機械との間でダイレクトな情報伝達を行う、「BMI(Brain-Machine Interface:ブレインマシンインターフェイス)」の一種です。つまりは、考えるだけで機械を操作したり、カメラなどで得た情報を脳に送ったりする技術ですね。

医療分野で活躍が期待されるBMI

医療分野では、BMIは体が不自由になった人の生活再建を促す技術として期待されています。
人間の手足は失われると二度と生えてきませんが、脳の手足を操作する部分は機能を維持しています。このため、神経信号を読み取って動く義肢(いわゆる筋電義肢)を付ければ、それらを動かすことが可能です。
しかし、例えば手足が付け根から失われたような場合、付け根から先端まで制御する個別の信号全てを読み取るのは難しくなります。また、脊髄損傷による四肢麻痺の場合などは、信号が手足まで届きません。
そこで、脳の信号だけで車いすや義手、ロボットや家電を動かすことができれば、こうした患者でも、不自由の少ない生活を送ることができるというわけです。

fMRIで思考を読み取る

IDCヘルズリヤが開発した技術では、脳の血流を測定する「fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能核磁気共鳴画像法)」が使われています。MRIはご存じのように、磁気で体内を映像化する技術で、fMRIはそれの応用版です。
体を動かすときに、それぞれの動作に対応する脳の各部位が活性化します。それぞれの部位の機能をあらかじめマッピングしておき、fMRIを使って血流を測定することで、イメージ中での体の動きを検出できるというわけです。

考えるだけで存在しない腕をVRで動かす

IDCヘルズリヤでは、7名のボランティアにfMRIスキャナーを装着し、画面内の架空の手足を思考だけで動かしてもらう実験を行いました。ボランティアの内3名は、1年半~2年前の間に腕を失った人が選ばれています。
7人はイメージだけで画面内の足を前後させ、手を左右に動かすことに成功しました。腕がない人が手を動かす場合は、ある人よりもわずかに反応が遅れるものの、ほぼ問題なく動かすことに成功しています。

これからの課題

ただ、今回の実験で出来たのは上下左右への簡単な動きだけで、筋電義肢のような複雑な動きを実現するのはまだ先の話です。また、fMRIは大きな機械であるため、実験室から外に持ち出すことができません。実用化するにはもっと小型・軽量な装置の開発を待たなくてはいけないでしょう。
ただ、画面内の腕を動かせるなら、原理的には現実の機械でも同じように動かせるので、BMIによる高度な義肢の開発に一歩近づいたといえます。体の方が動かなくても脳の機能は十分働き、機械を動かすのに使えるレベルであることが分かったのも重要な発見です。
この方法なら四肢麻痺の人でも、BMIで制御するエクソスケルトンなどを装着して、元のように歩くことも出来るようになるでしょう。
ハンデがハンデでなくなるのは、全ての人にとって待ち遠しい未来です。

 

ソース・画像New Scientist

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