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イギリスの大学が開発した「目」と自己学習機能を持つ義手

2017.05.11  | 
WRITER:
水谷圭佑
 

手の目」という妖怪をご存じでしょうか?
江戸時代に鳥山石燕という画家が描いた妖怪で、その名の通り手の平に目があり、座頭の姿をしています。
何故この妖怪が手の平に目を持っているのかは不明ですが、少なくとも目が見える人は、手に目があっても特に役には立たないでしょう。
しかし、義手に「目」の機能を付けることで動きの精度を向上させるシステムを、イギリスにあるニューキャッスル大学の大学院生Ghazel Ghazaeiさん率いる研究チームが開発しました。

進化した義手の課題

義手は千年以上前から存在している道具ですが、現代にいたってもその形態はほとんど進化せず、単なる飾りか、とても使いにくい不便な物のままでした。
しかし技術の向上に伴い、筋肉の電気信号を読み取り、通常の腕と同じように動く「筋電義肢」が、ここ20年ほどで急速に普及してきました。靴ひもを結んだり料理をしたりという日常の動作なら、特に問題なくおこなえるレベルに達しています。
しかしまだ課題は多く、例えば目の前にある物を正確につかみ取るような簡単な動作さえも、依然として困難です。

単純な動作を可能にする超精密システム

人間の手と目、脳は、とても精密に結びついた高性能なシステムです。ただ単に物を取るだけでも、脳は目から入って来た情報を基に物の大きさ距離を正確に判断し、最適な手の伸ばし方掴み方指の位置を計算しています。そして、手が触れた瞬間に材質の硬さと重さを判断し、最適な圧力を加えて保持します。
私たちが目の前にあるコーヒーの入った紙コップを取る時、普通はコップを倒したり、握りつぶしたり落としたりすることはありません。

日常の簡単な動作が難しい

しかし義手の場合は、そう簡単にはいきません。目と脳が正確な情報を送っても、筋電義肢の方が正確にフィードバックするほど精密に応答することは、まだ困難です。このため、手が当たってコップを倒したり、掴むポイントが不適切で物を落としたりしがちです。
しかも触覚は無いので、触れた瞬間に最適な持ち方を判断するのも簡単にはいきません。

義手を「手の目」にすると動きの精度が10倍増

この問題の解決のため、Ghazaeiさんらのチームは、義手に簡単なウェブカメラと、そこから得た情報を処理して動きに反映するシステムを搭載しました。
システムはカメラが映した物の形と大きさを判別し、義手に最適な掴み方を自動的に行わせます。
開発チームによれば、義手に99ポンド(約1万5000円)のカメラと、そこから得た情報フィードバックするプログラムを義手に搭載すると、たとえば物をつかむ際の反応速度は、従来の約10倍にまで向上するとのことです。

学習して「手慣れる」

また、このシステムはカメラに物体の形状を登録し、最適な掴み方を学習させることで、新しい物に対応することが可能です。ただし、同じ物体でも見る角度によって形状は異なり、光源の種類背景の様子が異なると、コンピューターは物体の違いや同一性を判断できなくなることも多いので、すべてのパターンを認識させる必要があると、Ghazaeiさんは話しています。
その他、物体の材質や中身の有無による重さ・強度の違いにより、最適な持ち方も変化することでしょう。
この問題については、クラウドのような共有型データベースを使い、情報を大量に蓄積することで改善することができそうです。

目がついた義手の展望

義手にカメラを搭載する方法は、将来に義手が本物の手と同等の動きができるようになるまでの「つなぎ」であり、この方法が最終段階ではないと、ニューキャッスル大学は話しています。
しかし、比較的簡単な方法で筋電義肢の反応速度と正確性を向上させる仕組みがあれば、義手を使って生活している人の生活をより便利なものにすることができるでしょう。このほか、ロボットのマニピュレータに応用することで、より上手に物体を操作することも期待できそうです。

 

ソース・画像:New AtlasNew Scientist

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