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空中での変形が可能な、垂直離着陸型ソーラーUAV『SUAV:Q』が登場

2017.03.14  | 
WRITER:
水谷圭佑
 

ヘリコプターの様に垂直に離陸し、飛行機の様に長距離・長時間飛べて、しかも軽量で低コストな飛行機があったら……。そんな欲張りな夢を実現する新型のドローンが、ミネソタ大学の研究チームによって開発されました。
このドローン『Solar Unmanned Air Vehicle: Quad (SUAV:Q)』は、名前の通り太陽電池で駆動する機体で、農業分野での利用を想定しています。

広い畑で運用できるドローンの必要性

ヘリ型ドローンでは航続距離がたりない……

 

農業分野では、以前からラジコンヘリのようなドローンが農薬散布などに使われてきました。カメラの性能が向上した現代では、作物の生育監視にも使われるようになっています。しかし、アメリカの様に畑の面積が非常に大きいところでは、一般的なクアッドロータータイプのドローンでは航続距離が不十分で、一度に全体を見て回ることができません。
大型の固定翼機型ドローンなら航続距離は長くなりますが、翼が長いためにかなりスペースを取るうえ、離着陸用の場所と設備が必要となるため、相応のコストと手間がかかります。

空中で変形する新型ドローン

実物ではプロペラが2基になりました

 

農業分野で活躍できるドローンを作るべく、ミネソタ大学のニコラス・パパニコロプロス氏らの研究チームは、機体の形状そのものを変形させることで、垂直離陸能力と固定翼機の航続距離という両方の特性を持つ航空機の研究をおこない、SUAV:Q作り出しました。
SUAV:Qは、機体全体が翼として機能する平たい形状をした、いわゆる全翼機のドローンです。全幅は2.1mで、後部に搭載したプロペラによって推力を得ます。
格納時の形状は、翼を蝶番で折りたたみ、プロペラが上を向いた四角形の枡形です。この状態のまま、プロペラをヘリコプターのローターのように使うことで垂直に離陸し、空中で翼を展開して飛行機型となって、固定翼機として飛行をおこなうように設計されています。
変形は空中で自在におこなえるので、地上の様子を詳しく見たいときには翼を畳んでホバリングし、定点観測をすることも可能となっています。

SUAV:Qの便利さ

空中で転がるようにして変形します

 

SUAV:Qは格納状態ならば1辺が約50cmとコンパクトなので、ピックアップトラックの荷台やバンの後部座席にも簡単に載りますし、使う際に組み立てる必要もありません。
翼の表面は全てソーラーパネルで覆われており、晴れた日ならば充電なしで飛行しつづけることが可能です。最高飛行高度は120mで、搭載したマルチスペクトルカメラによって赤外線などで植物の生育状態を遠くから監視できます。

実用化のめどは?

すでに開発チームは、メーカーと契約を結んで商業販売の準備も進めています。発売されれば、数十万円で購入するできるようになるとのこと。3月以降は実際の使用を想定した野外での耐用試験を実施し、それをクリアすれば実用化に至ると見られています。
日本では畑の面積は小さいのですが、代わりに広大な面積を持つ山林があるため、そちらの監視に役立ちそうな気がします。実際、農業分野以外にもパイプラインのような大規模インフラの検査や、山林火災の状態確認での使用も見こまれているようです。

火星探査分野に活用できる可能性も

パスファインダー計画で作られたソーラーUAV『ヘリオス』

 

2001年にNASAの『パスファインダー』計画の元でエアロバイメント社が開発したソーラーUAV『ヘリオス』は、折り畳み機構こそないものの、SUAV:Qを大型化したような形状をしていました。
パスファインダー計画は高度30kmの超高空や火星のような大気の薄い場所を、数カ月の単位で飛び続けるUAVの実証計画です。
ヘリオスのようなパスファインダーにSUAV:Qの変形機構を搭載すれば、必要に応じて着陸して充電したり、ホバリングして定点観測したりできる、自由度が極めて高い火星探査機が誕生するかもしれません。従来の火星探査機は全て地上移動式のロボット(UGV)でしたが、これから航空機型の物も登場し、探査可能範囲が一気に広がることも期待できます。

 

ソース・画像:New ScientistUAV Expert NewsN+1

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