RN 004242

【AI未来予測】2030年、コミュニケーションの断絶を防ぐには――教育編

2016.12.27  | 
WRITER:
あずさゆみ
 
前の記事に戻る

未来予測レポート・その4「教育」

スタンフォード大学・AI100が発表した2030年のAIと暮らしを予測するレポートを、シリーズでご紹介しています。その4は「教育」についてです。

教育とAIなどの先端テクノロジーは、親和性が高いように思います。特に語学教育は、そういえるのではないでしょうか。外国語の学習をサポートするアプリは数え切れないほど出ていますし、電子書籍ならワンタップで辞書を引き、意味や発音をたしかめることができます。

オンライン学習

大規模公開オンライン講座(MOOC=Massive Open Online Course)は、ここ数年で爆発的に数を増やしました。日本でも、無料で学べる大学講座・gaccoをはじめとしたMOOCがさまざまな講座を提供していることを、ご存じの方も多いでしょう。MOOCは大学で受けるような講義をオンラインで視聴し、理解度を確認するクイズ(テスト)やレポートを提出する仕組みになっています。さらに、ディスカッションの場がもうけられていたり、対面学習を受けることができたりと、単なる通信講座とは一線を画すものです。
通信環境とタブレットといったアクセス手段さえあれば受講できるシステムは、就学率の低い国での教育支援においても力を発揮することが期待されますね。

知的教育支援システム(ITS)

ITSの活用もはじまっています。高校で数学や地理を教えるシステムでは、問題に引っかかった学生にヒントを与えるという、人間の教師の役回りを真似するソフトウェアもあるそうです。
空軍の技術者用に、航空機の電気系統の不具合の診断手法を教えるシステムも使われています。さらに興味深いのは、南カリフォルニア大学で開発されたアバターを使うトレーニングシステム。これは、海外に駐留する軍人に、異なる文化背景を持つ人間と接触する際の適切な振る舞いを教えるものなのだとか。

 

ITSの利点のひとつは、各人の進度に合わせられるところです。人間の教師の役割がなくなることはなくとも、ひとりひとりの習熟度に合わせて学習を進めるAIの導入が、今後加速していくことは間違いないでしょう。

知育玩具

ロボットを組み立てたりプログラムしたりという作業を通して論理的思考を養う、を謳い文句にした玩具が登場したのは1980年代のことでした。
lego_31313_box1_in_24_1488
たとえば、MITとレゴ社が共同開発したロボット、レゴ・マインドストーム。ほかに、プログラミングに必要な論理的思考を鍛えるOzobot(オゾボット)、ブロック状のユニットを組みあわせてロボットを組みあげるCubelet(キュビレット)など。
こういった玩具が学力向上につながるというたしかなエビデンスはなく、広く取り入れられるには至っていないそうですが、テクノロジーに親しむきっかけになっていることは間違いないでしょう。おもちゃの第一義は楽しむことですし、過剰な期待を寄せるのはいかがなものか……とも思います。

 

社会性をどう養う?

学習アプリの普及によって、好きな時間に好きな科目を学ぶことがますます容易になりました。MOOCは、大学レベルの講義を自宅で受けることを可能にしてくれます。正規の教育システムがなくなることはこの先もないでしょうが、学習がこれまで以上に個別化していくことは避けようがありません。
今後15年でAIの導入が進むことはもちろん、ロボットチューターやVR技術もどんどん活用されるようになるでしょう。

そういった状況で、学生の社会性をどう養っていくか、が大きな課題になっています。
いまでさえフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションよりSNSに割く時間のほうが長い傾向があるというのに、コミュニケーションの対象がAIになってしまったら? そうなったらそうなったで「社会性を養うためのAI」が登場するのでしょうが、生身の人間同士の接触が減っていくというのは恐ろしいですね。
ただ、AIとのやり取りで恩恵を受ける人もいます。興味や関心の幅が狭く、他者と社会的な関係を築くことが苦手な自閉症の人には、AIを使った個別学習が効果的なのだとか。AIによって自閉症の人の活躍の場が広がるというのは、嬉しい話です。

 

友達の家に泊まって夜通しおしゃべりしたり(そして叱られたり)、些細なことで喧嘩をしたり、がむしゃらに部活に励んだりというのは、学生の時にしかできない経験でしょう。学生時代の、とりとめのないおしゃべりがずっと心に残っている、なんてこともあるかもしれません。AIを使って効率的に学習できる未来を否定することはできませんが、人の成長でもっとも重視すべきが効率ではないことは、心に留めておくべきでしょう。

 

AI100と未来予測レポートについて

ai100_robot-concept_1

One Hundred Year Study on Artificial Intelligence、通称AI100は、人工知能が人々の生活、仕事、娯楽などに与える影響を100年にわたって調査するプロジェクトです。2014年にスタンフォード大学が発足させました。
AI100が今秋発表したのが、“ARTIFICIAL INTELLIGENCE AND LIFE IN 2030”。「2030年における人工知能と人々の暮らし」を、以下の項目別に予測するレポートです。北米の平均的な都市における予測なので、日本とは事情が異なる部分もありますが、今後15年でAIがどう発展し暮らしと関わってくるのか、興味を惹かれますね。

運輸・交通(Transportation)
家庭/サービスロボット(Home/Service Robots)
ヘルスケア(Healthcare)
・教育(Education)
・人材不足問題(Low-resource Communities)
・保安・防犯(Public Safety and Security)
・雇用・労働問題(Employment and Workplace)
・娯楽(Entertainment)

次回は、人材不足問題にAIをどう活用するかについて、お伝えします。

《画像ソース》
Lego

 

前の記事に戻る
thank you

この記事に関連するタグ

上に戻る