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【AI未来予測】2030年、AIが実現するオーダーメイド医療とは? ――ヘルスケア編

2016.12.20  | 
WRITER:
あずさゆみ
 
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未来予測レポート・その3「ヘルスケア」

スタンフォード大学・AI100が発表した2030年のAIと暮らしを予測するレポートを、シリーズでご紹介しています。その3のテーマは、「ヘルスケア」です。

ヘルスケアは、AIの導入がもっとも進みつつある分野のひとつかもしれません。すでに、膨大な論文を検索してがんの治療方針を変更するように進言したAIによって、患者の命が救われた事例があります。マンモグラフィの読影をおこなうAIは、先日ロボットノートでも取りあげました。
活動量計や体重計のデータをスマホで管理している方、少なからずいらっしゃいますよね? 薬の飲み忘れを防ぐために、リマインダーのアプリをお使いの方もいらっしゃるでしょう。そういった方は、医療情報の管理にAIを導入することに、さほど抵抗感を抱いておられないかもしれませんね。

オーダーメイドの医療の時代へ

突然ですが、「お薬手帳」を持っていますか? 薬の飲み合わせなどをチェックするため、病院で処方された薬を記録するための手帳は、たまに風邪を引いて受診する程度の人には面倒な仕組みに思えます。
お薬手帳にはスマホのアプリもありますが、医療機関をまたいで投薬の記録を管理するシステムがあれば(そしてユーザー自身もデータを閲覧できれば)、お薬手帳は要らなくなりますよね。

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カルテの電子化は、ずいぶん進んできました。さらに、電子カルテを一歩進めたEHR(Electronic Health Record:生涯健康医療電子記録)を導入し、医療施設の枠を超えた患者の診療データを蓄積するという構想も進んでいます。診療記録だけでなく、家庭で測定した血圧や血糖値のデータ、活動量計などウェアラブル・デバイスのデータもリンクさせて一元管理すれば、よりきめの細かい治療や生活指導がおこなえるようになりますね。

 

さらに、EHRによって収集された膨大なデータを、匿名化して研究や教育にも利用しようという動きもあります。症例の巨大データベースが構築されれば、AIが診断や患者のケアを支援することが可能になり、膨大なデータに基づいたオーダーメイドのヘルスケアも可能になるというわけですね。
本人のすべての受診歴、予防接種の記録や健診データはもちろん、家族の病歴、ゲノム情報が一元管理されるようになったら、健康管理上の利点は大きいでしょう。救急車でそういった情報が引き出せたら、救命率があがるかもしれません。

個人情報はどうなるの?

しかしその一方で、たとえば就職や結婚に際して、本人の意に反してそういった情報が使われる危険性はないのでしょうか? また、将来罹りやすい病気を理由に、生命保険に加入できない、また保険料が高額になる可能性もありそうです。

収集されたデータが不利益を及ぼさない仕組みがつくられ、医療従事者や患者の信頼を勝ち得なければ、EHR構想は進展しないでしょう。

すでにAIが活躍する分野も

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EHRを導入するには制度をしっかりと整備する必要がありますが、放射線や超音波画像の解析にAIを導入するこころみは、すでにはじまっています。完全な自動化にはいたらなくとも、精密検査の要否を判断する「トリアージ」やセカンドレベルのチェックにAIを活用し、診断の速度、精度、コストを削減する動きは、確実に進んでいくでしょう。

高齢者ケアは成長が見こまれる分野

ケアワーカーの不足は深刻な問題ですが、介護現場へのロボットの導入には、まだ抵抗感があるように見受けられます。しかし、2030年レポートは、この傾向は世代交代とともになくなっていくと予測しています。

現在70歳の人は、1946年生まれ。PCが普及しはじめたころ、すでに中年にさしかかっていた世代です。一方、現在40代の人は、学生時代からPCを使っていた世代。20代は、生まれた時から家にPCがあった世代です。早くからテクノロジーに親しみ、精通していた世代は、さしたる心理的抵抗もなくロボットのケアを受けいれることができる、と考えられているんですね。となると、2030年はロボットによるケアがようやく本格化しはじめるころ、ということになるでしょうか。

自立を支援

自動運転の交通システム、そしてインテリジェント・ウォーカーや車椅子、外骨格など、高齢者の行動を助けるシステムは、今後15年で導入が進んでいくでしょう。また、自宅での着替えやトイレを補助するデバイスは、高齢者が自立した生活を送るうえで大きな助けになります。

たとえば、こちら。トイレの介助をしてくれるMelvinです。

さらに、聴覚・視覚を補うテクノロジーが発達して、安全に行動範囲を拡げることができるとも考えられているそうです。

スマートハウスに組みこまれたセンサーや、ウェアラブル・デバイスによって健康状態がモニタされ、体調不良の前兆を検知して対応することも可能になります。オーダーメイド医療による個別のリハビリや生活支援ロボットを活用することで、病院より住みなれた自宅で過ごす時間が増えるというのは、ありがたいですね。

もっとも、ここでも個人情報保護の壁が立ちはだかっています。それに、便利になりすぎて外出しなくても事足りると、かえって引きこもりになる人もいそうですよね?
AIテクノロジーの発展とともに、社会性を保つ仕組みを改めて考えていく必要がありそうです。

AI100と未来予測レポート

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One Hundred Year Study on Artificial Intelligence、通称AI100は、人工知能が人々の生活、仕事、娯楽などに与える影響を100年にわたって調査するプロジェクトです。2014年にスタンフォード大学が発足させました。
AI100が今秋発表したのが、“ARTIFICIAL INTELLIGENCE AND LIFE IN 2030”。「2030年における人工知能と人々の暮らし」を、以下の項目別に予測するレポートです。北米の平均的な都市における予測なので、日本とは事情が異なる部分もありますが、今後15年でAIがどう発展して暮らしと関わってくるのか、興味を惹かれますね。ロボットノートでは、日本の状況を加味した独自の視点でAI100のレポートを紹介しています。

 

運輸・交通(Transportation)
家庭/サービスロボット(Home/Service Robots)
・ヘルスケア(Healthcare)
・教育(Education)
・人材不足問題(Low-resource Communities)
・保安・防犯(Public Safety and Security)
・雇用・労働問題(Employment and Workplace)
・娯楽(Entertainment)

次回は、2030年のAIと教育についてです。どうぞお楽しみに。

 

《画像ソース》

Intersog
Futurism

Stanford University

 

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