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望まない妊娠を防ぐ「赤ちゃんロボット」の効果とは?

2016.09.28  | 
WRITER:
石井妙子
 

若年妊娠を防ぐはずの「赤ちゃんロボット」が逆効果に

日本だけでなく世界中で少子化問題が叫ばれる現在。その一方で、10代の若年妊娠が社会問題化している国が多いのも事実です。特にアメリカやイギリス、オーストラリアなどは、欧米諸国のなかでも10代の妊娠率が高く、これを防ぐ政策が試みられています。

なかでも興味深いのが、オーストラリアをはじめとする世界89カ国の学校で導入されている「赤ちゃんロボット」を取り入れた性教育。これは、新生児の世話がどれだけ大変な苦労を伴うかを疑似体験することで、軽率な性行為による「望まない妊娠」を防ぐことを目的としています。

これが「赤ちゃんロボット」…ちょっと怖い

これが「赤ちゃんロボット」…ちょっと怖い

ところが、意外な事実が判明します。「赤ちゃんロボット」には10代の妊娠を抑制する効果がなく、そればかりか逆に出産を増加させる可能性があったと、英医学誌『The Lancet』が発表したのです。

「赤ちゃんが欲しい!」という気持ちを後押し?

実験で使われたのは、Realityworks社の「RealCare Baby」という乳児シミュレーターロボットです。コンピューターを搭載し、排泄したりお腹が空いたりするだけでなく、機嫌が悪くなるといった感情表現の機能も付いた、まさに「赤ちゃん」に近いロボット。ロボットのメーカーは利用想定シーンとして、今回のような性教育・ティーンの妊娠防止の他にも、育児のスキルアップや児童虐待防止、幼児の健康管理などを挙げています。

今回の研究は、2003年から3年間にわたり、オーストラリア・ウエスタンオーストラリア州で13~15歳の少女約3000人を対象に大規模に行われました。生徒は、数週間の間この赤ちゃんロボットと共に生活し、母親を疑似体験します。このうち、1267人に赤ちゃんロボットを週末だけ貸し出し、それ以外の1567人は一般的な性教育を受けさせ、その後、被験者が20歳になるまで追跡調査を実施しています。

肌の色と髪の色が違う7種類から選べる

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その結果、一般的な性教育を実施したグループで20歳までに妊娠したのは全体の4%。対して、赤ちゃんロボットを使ったグループで20歳までに1回でも妊娠した人の割合は全体の8%と、なんと倍近くに!つまり、赤ちゃんロボットは10代の妊娠を抑制するどころか、妊娠を促す効果がある可能性が指摘されたのです。

この結果に関する詳細な理由は不明とされていますが、研究主任のSally Brinkman氏は「この類の研究としては、過去最大規模。善意のプランにも予期しない結果を生み出す可能性があることを浮き彫りにした」とコメントし、「若年妊娠を防ぎたいなら、おもちゃの赤ちゃんを使うアイデアは推奨しない」と結論付けています。

推測ですが、今回の実験が週末だけの限定体験だったことで、少女たちが育児の本当の苦労を学ぶ以前に「可愛い赤ちゃんが欲しい!」という感情を抱いたのかもしれません。本当に出産して育児が始まれば、24時間365日赤ちゃんと向き合わなければならないわけですが、その想像はこの実験では難しかったのでしょう。

この話を聞いて思い出したのが、ソニーがかつて発表した犬型ペットロボットのAIBOのこと。ペットの代わりにAIBOに愛情を注ぐ人々がいましたが、生徒たちもペットに近い感覚で赤ちゃんロボットに触れたのかもしれません。とはいえAIBOは、時間と共に個性が生まれたり話しかければ答えたりと、より「生き物」に近かった存在。赤ちゃんロボットにもそのぐらいリアリティーがあれば、結果は違っていたのかもしれません。使い道を改めて考え、どんな形で性教育に役立てていくのか。改善に期待したいと思います。

 

ソース・画像:HEALTH PRESS

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