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俊敏な動きの鍵は「不安定性」にあり。ムカデから敏捷さを学んだ多足ロボット

2016.08.04  | 
WRITER:
あずさゆみ
 

生体の機能をまねるバイオミメティックスについては、このコラムでも何度か取りあげてきました。今回登場するのは、うねうねと地を這う凶暴なヤツ、ムカデの動きを模したロボットです。

ムカデ型多足ロボット

ムカデ型多足ロボット

ムカデは多数の足(肢)を持つ節足動物です。漢字では「百足」と書き、英語名のcentipedeは100の足を意味するラテン語です。その足の数たるや、もっとも少ない種で15対30本、もっとも多い種では173対346本! その細長い体を支えたり推進力や減速力を得たりするため、ムカデは多くの足を地面につけているわけですが、それはつまり「多くの足が地面に拘束されている」ことでもあります。

 

ですが実際のムカデは、素早く動きまわります。そのメカニズムをムカデの数理モデルを使って解析し、多足ロボットで検証した京都大学の研究が、発表されました。

それによると、ムカデの素早さの秘密は「不安定さ」にあるのだとか。うねうねと蛇行していることが、安定的かつ機敏な動きの鍵なのだそう。
せっかくなので、ここで本物のムカデの動きも動画でご覧いただきましょう……と言いたいところですが、スリリングな動画ばかり出てきてしまうのでリンクは控えることにしました。興味がある方は、自己責任でどうぞ。

 

冗談はさておき、京大の資料を一部転載しますね。
「……体軸を真っ直ぐにした直線歩行が歩行速度や体軸柔軟性(体節を繋ぐバネのバネ定数の逆数)に応じて不安定化し、蛇行運動に遷移することを明らかにしました。速度や柔軟性といったパラメータの変化により安定な状態が崩れ、蛇行運動のような安定な周期的振る舞いが新たに現われることを「ホップ分岐」と呼びます。本研究では、この分岐による直線歩行の不安定性が急旋回のような素早く機敏な行動を可能にすることを、多足ロボットが地面に置かれたターゲットに近づく急旋回実験を通して明らかにしました」
『ムカデはなぜあれほど機敏に動けるのだろうか? ――多足ロボットを用いた実験的検証――』

このレポートを読んで、自動二輪の教習にあった一本橋のことを思い出しました。これは、幅30センチ長さ15メートルの一本橋を、7秒(大型は10秒)かけて渡りなさいというもの。

直進安定性と旋回性能は、トレードオフの関係にあります。車のスピードが上がれば、直進安定性は増しますが曲がりにくくなりますよね? 一本橋も、速く渡っていいなら難しくありません。ですがゆっくり渡ろうとすると、バランスが崩れがちになってしまいます。

そこでどうするかというと、ハンドルを小刻みに動かして車体をわずかに振ります。すると、あら不思議。大きくバランスを崩すことなく、じわじわ進めるようになるんです。これってつまり、京大のレポートにあった「安定な周期的振る舞い」じゃありませんか? そう考えると、蛇行することで安定性と俊敏さを両立させるムカデの歩行方法が理解できる気がします。

 

ムカデ型多足ロボットは起伏の激しい場所でも素早く移動できるうえ、一部の足が欠損しても移動能力を維持することが期待できます。ムカデの形態に着想を得たレスキューロボットはすでに開発研究されていますが、歩行メカニズムを本家に近づけることによって、より安定性が向上し、素早い機動も可能になるかもしれません。
ところで、このレポートの最後に気になる記述がありました。「ゴキブリのような敏捷に歩行する節足動物も、直線歩行の不安定性を利用していることが示唆されています」とあるんです。
ゴキブリは物陰から物陰へと最短距離で走り抜け、ストップ・アンド・ゴーを繰り返すイメージなのですが、その歩行方法に蛇行するムカデと共通する特徴があるんでしょうか? G型レスキューロボットが現われる日も、遠くはない……?
《画像ソース》
Hey robot, shimmy like a centipede ――Kyoto University

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