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最短30分でロボットが歩き出す! 世界初「汎用型ロボットOS」を作ったアスラテックが見るロボットの未来とは?【1/2】

2016.08.02  | 
WRITER:
石井妙子
 

家庭や職場で、ロボットと人が共存する未来。コンピュータがすっかり生活に浸透したように、ロボットも量産化・低コスト化が進めば、今よりずっと身近になるでしょう。そんな未来への前進を感じさせるのが、世界初の汎用ロボットOS「V-Sido(ブシドー)」です。ロボット開発にもたらす変化、目指すビジョンを、V-Sidoを展開するアスラテックの事業開発部部長・羽田卓生さんにお聞きしました。

「あらゆる用途に使える」が一番難しい

従来のロボット開発は、ハードウェアからソフトウェア、コンテンツまでを一社ですべて手がけるため、膨大な時間とコストが必要でした。

アスラテックがV-Sidoを通して提案したのは、ロボット開発の「分業化」。たとえばコンピュータの業界は、OSとCPU、筐体、アプリケーションなどすべて分業で成り立っています。ロボットも同様に、それぞれの企業の得意分野を生かして特化することで生産性がアップし、開発サイクルの加速とコスト削減につながるのです。

パソコンや携帯電話の開発と同じように、ロボット開発は年単位で時間を要するものですが、V-Sido OSを使うことでプロセスの大幅な短縮が可能になりました。

たとえば、あるメーカーが持ち込んだヒト型ロボットをV-Sidoで制御してみたところ、わずか30分ほどで二足歩行を実現できたという例もあります。「意図した通りに動くか」の判断が即座にできるので、何度もトライアンドエラーを繰り返して開発サイクルを早めていけるのです。(羽田さん)

開発の背景にあるのは、アスラテックが掲げる「人とロボットが共存する世界」というテーマ。

V-Sidoの生みの親であり、同社チーフロボットクリエイターである吉崎航さんは弱冠24歳でV-Sidoを開発し、その成果によって経済産業省から「スーパークリエータ」に認定された業界屈指の存在。吉崎さんは、「10年かけて1台のロボットをつくるのではなく、ロボットが世の中にあふれる社会をつくりたい」との思いがあり、その手段としてロボットOSであるV-Sidoを開発したとのことです。

パソコンのOSがメモリやファイルといったリソースをマネジメントする役割を担っているのと同様の考え方

パソコンのOSがメモリやファイルといったリソースをマネジメントする役割を担っているのと同様の考え方

通常、ロボットを動かすためには、複雑な計算や制御などロボット工学の専門知識が必要です。しかしV-Sidoを搭載すれば、そうした処理をOSが自動で受けてくれるためハードルが下がり、多様な業界からロボット開発に参入しやすい状況に。つまりV-Sidoの登場により、業界の構造自体に変化が生まれるのです。

重要なのが、V-Sidoが多数のメーカーのロボットに対応できる世界でただ一つの「汎用型OS」である点。ホビーロボットから巨大ロボットまで、また災害救助や介護、家事サポートまでさまざまなロボットに搭載できるのです。

「何にでも使えるもの」を作ることは、一番難しい。ロボットはヒト型や4本足かなどの形から関節の数、目に見えない駆動方式までメーカーごとに千差万別です。それらを抽象化して動かすために高い技術が求められるからこそ、世界に一つしか存在しないのでしょうね。(羽田さん)

アスラテックは「ロボットの形状や用途は選ばない」を信条に、ヒト型ロボットを中心にさまざまな形状や大きさ、アクチュエータ(駆動装置)に対応し、V-Sidoのロボットへの採用事例は、現在14件に及びます。

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採用例の中で最も大きいものは、水道橋重工の高さ4m、重量約5tに及ぶ巨大ロボット「KURATAS(クラタス)」。人間が搭乗でき、さらにパソコンやタブレットなどで遠隔操縦も可能です。このほかにも、BRAVE ROBOTICSが開発した車型と人型とに変形するロボット「J-deite Quarter(ジェイダイト・クォーター)」や、ロボティクスファッションクリエイターのきゅんくんが制作したウェアラブルロボット「METCALF clione(メカフクリオネ)」など多方面で採用されています。

動きを司る「小脳」の役割を果たすOS

従来のロボットのようにあらかじめ動作のモーションを作り込まれるのではなく、リアルタイムで関節の動きやバランスを計算し、動きを制御するV-Sido。たとえば、単に「右手を挙げる」と命令を指示するだけでなく、手を挙げた時に転ばないよう、全体のバランスをリアルタイムで計算した上で手を挙げさせます。

V-Sidoの特徴は「リアルタイム性」「安定性」「効率性」の三つ。人間の意図をその場で伝えることができるうえ、安全なロボットの開発に役立ちます。(羽田さん)

ロボットにおいて、AI(人工知能)は人間の脳に例えれば知性を司る大脳の役割を果たします。一方「V-Sido」が担うのは、身体の運動を司る「小脳」と「脊髄」の役割。小脳は知覚と運動機能を統合し、活動するときの平衡感覚や随意筋(自らの意思で動かせる筋肉)の調節を司っています。

立つ、歩く、バランスをとるといった運動面の機能を持つV-Sidoは、いわば「動く肢体」。つまり言葉のハードルがないので、海外でも使うことができるのです。AIとの連携も可能です。(羽田さん)

次回は、ロボット開発の裾野を広げる開発支援やコンサルティング、そしてロボットの未来像についてお聞きします。
羽田卓生さん
1998年にソフトバンク入社後、メディアビジネスや通信ビジネスに主に従事。2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパン代表幹事。ロボット業界の広範囲ネットワークと事例をもとにアドバイスを行う。
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